先輩!彼氏にしてください!
第6章 看病いたします
「確か……洗面所の右下の引き出しに、服があったと思うから」
「それ、僕着られますかね?」
「大丈夫、男物だから」
「え」と声を上げた谷川くんは眉尻を下げながら私を眺める。
「違うよ、父親の。泊まりに来た時においていったの」
何も言われてないのに、『違うよ』とは否定する。
まぁだってどうせ元カレのもの?とかそういうことを思ってるんだろうし。
「本当ですか……」
「本当だって」
少し安心した顔を見せた谷川くんは、「では…お言葉に甘えて」と言って、お風呂場へと向かう。
「先輩は、ちゃんと休んでてくださいね。病院開いたら、一緒に行きましょう」
「……………うん」
満面の笑みに返事をする。
本当に調子…狂うなぁ。
病気のせいで気が弱くなっているのかもしれない。
谷川くんのことだし、弱味に漬け込もうとしているのかもしれない。
気をしっかり持たないと、また麻理が脳内で「ほだされてるでしょ?」とうるさい。
暑くなってきて、布団をはいだ私は、額に腕を乗せた。
そして用意されたお粥を口に含む。
「…………うま…」
それは、少しだけ塩気のある優しい味だった。