先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩
それから、悶々としながらもいつも通り、谷川くんとの日々は続き、ついにはモデルが終わって数日経った頃のことだった。
麻理に言われたことは敢えて考えないようにしていた時、突然私の元に困った様子で現れたのは谷川くん……ではなく、美術の早坂先生だった。
「えっと、君が、安藤さんだよね」
放課後、生徒会室に向かうとしていたまさかにその時のこと。
「…? お久しぶり、です…」
早坂先生なんて一年生の授業ぶりに話す。
海外の、魔法使い系映画に出てきそうな、そんな独特な出立ちは今も変わらないみたいだ。
「ちょっと、助けて欲しくてね」
「え? 何をです?」
「ほら、あの…君を必死に口説いている天才谷川くんなんだけど」
「……………………」
口説いている…なんてそんな生ぬるい言葉でいいんだろうか。
そんなどうでもいい疑問が生まれながらも、「はい」と返事するのもおかしい気がして、私は代わりに「はあ」と気の抜けた返事をした。
「安藤さんをモデルに、絵を描いてたでしょ」
「………はい、なんか、夏のコンクール用?だとか」
「そうそう!」と早坂先生はそこだけイキイキと答えた。