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先輩!彼氏にしてください!

第1章 彼氏にしてください!



「ほのか先輩……」


「せっかくのお昼なのにあんたが隣にいるせいで全然休まらないし、友だちとも話せない。しかもご飯もまずくなる」



立ち上がった私は呆然としている麻理に声を掛ける。



「ごめん、席替えよ」



トレイを持って、別の空いている席を探しながら、私また心の中で『キマッタ』と呟いていた。



「ちょっと…大丈夫? 後輩くん固まったまま動かないけど」


「知らない」


「あんなにキツく……ほのからしくないじゃん」



確かに私らしくなかったかもしれない。


麻理の言う私らしさとは、優等生で落ち着いてて、みんなに心優しい人間で…


決してみんなのいる食堂で後輩にキレたりしなくて……



「あれくらい言わないと、優しくしたって調子に乗るだけだし」




そうだ。


こうすることが、谷川くんに対しての優しさなんだ。


変に気のある素振りを見せたって後で傷付けるだけだし、意味はない。



「ふぅ……」



新しい席に着いた私は肩の力を抜く。


休み時間になんでこんなに疲れなきゃいけないのか。


頭を振った私は麻理に謝ると、何事もなかったかのように残りのお昼休みを過ごした。


その間、谷川くんの様子を気にすることもしなかったし、谷川くんも再び私の前に現れることもなかった。

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