先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩
私も私で矛盾がある。
それは分かってる。
「……あの時は…谷川くんが泣いたりするから……だから同情して ───」
「──── ほのか先輩は、同情でキスするんですね」
「…っ…………」
「『勘違いしないで』とは言いつつ、ちょっとは僕の事、好きって思ってくれてるのかなって思っちゃいましたよ」
そう言って、切ない顔で笑った谷川くんは私の顎を優しく掴む。
「……あのっ…谷川くん」
「同情って知って……落ち込みました」
谷川くんの綺麗な瞳の中のひまわりが揺れる。
「立ち直れないかもしれない……だから、キスしてください」
「っ……」
「同情でキス、するんですよね?」
そう言いながら、谷川くんは目を瞑るとゆっくりと優しく私の唇を塞ぐ。
特に体も拘束されていないし、無理矢理でも何でもないのに、この場から動けない。
訳も分からず胸が苦しくなっていると、谷川くんは触れるだけのキスをして顔を離した。
そして、谷川くんはまた泣きそうな顔をしながら、私の背後の壁に手をついて俯いた。
「……っ…」
「……だから…そういう顔するほのか先輩が悪いんですよっ…嫌なら、もっと嫌そうにしてください……っ」
答えに困りながらも、自分の中でもまだ整理がついていないから、やっぱり何も言えない。
「…………キス、したんだから、絵、出しなよ」
話を逸らしてそう伝えると、谷川くんは諦めたように力なく「分かりましたって」と言ったので、私は今度こそ谷川くんの腕からすり抜けて、飛び出すように部屋から出た。