先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩
背の高い谷川くんは私の事を見下ろしている。
喉元が動いているのを見て、ゴクリと唾を飲んだのが分かった。
なんとなく、今までの経験から脳内でサイレンが鳴り響く。
「あの……あと、絵を出す代わりに…キス、させてください」
「………は?」
ほらね、やっぱ変な事言い出す。
「なんで、谷川くんの絵をコンクールに出す為に私がキスしなきゃいけないの?」
「だって、僕は嫌なのに、先輩のお願いで絵を出すんですよ」
なんか急に強気でムカついてきた。
そりゃ、私のせいで谷川くんの才能が潰れるのが嫌だからコンクールに絵を出すように仕向けたけど。
そもそもコンクールに谷川くんの絵が出たって私にプラスがあるわけではないし。
元来私が体張ることじゃない、はずだ。
「………そこまでしないといけないなら、別に絵、出さなくていいよ」
私の返答が想定外だったのか、谷川くんは、びっくりした顔をしながら「えっ」と声を上げる。
そして、シュンと落ち込んだ様子を見せる。
それがやっぱり可愛く見えて、今度は谷川くんが私に揺さぶりを掛ける。
「そんなに…僕とキスするの嫌ですか」
「っ……あ、当たり前でしょ! そもそもキスって好きな人とするものだし!」
「じゃあ……美術室でほのか先輩からキスしてきたのは…なんだったんですか?」
うっ………
それを言われると……
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