
仔犬のすてっぷ
第11章 最初の、すてっぷ
「……俺って、信用無いのな…(汗)」
湯船に両脚を入れたものの、浸からないまま蒼空の対面に立って、じーっ…と彼を見る僕に、蒼空はふぅ~っとため息をついた。
「……だって……いきなりキスするから……」
「ああでもしないと、優希に俺の気持ちが伝わらないと思ったんだよ。結構テンパってたみたいだし」
「僕を落ち着かせるためだけに、キスしたの?」
・・・なんだろう…僕の心がもやもやしてる。
「もちろん!と言いたいトコだが、お前とキスしてみたかったってのもある」
「僕が…蒼空の、好みの、どストライク…だから?」
「嬉しいねぇ…出逢った時に言った俺のセリフじゃん。覚えていてくれたか」
「忘れられる訳無いよ。インパクト、強かったんだもん」
あの日から、そろそろ3週間が経つ。
蒼空と出逢ってから、まだ、それだけしか経っていないのに、もっと……2、3ヶ月前からずっといたような……
そんな感じが僕の中にはあった。
それだけ、蒼空といる時間が増えて、僕にとって彼の存在はさらに大きくなりつつあるということだろう。
それにしても。
さっきから胸の中にある……もやもやしたもの。
コレは一体なんだろうか…?
「いいから座ったらどうだ?
まさか、この状態でずっと立ってるつもりか?
折角の温泉、勿体無いぜ?」
そうなんだ…脚はすでにお湯に浸かっていて…
温かくて……やっぱり、もう。
「はああぁ〜〜…」
我慢できなくなって、ゆっくり体を湯船に浸からせる。
お湯に身体が優しく包まれて、僕は自然に声を出し、幸せアピールをした。
