
仔犬のすてっぷ
第11章 最初の、すてっぷ
なんか、今まで意地になっていたものが、もう、どうでもいいや!って気持になる。
やっぱ、温泉は気持ち良い♫
「……上、見てみな?星がよく見えるぜ?」
蒼空が僕の上の空を見上げている。でも、僕の方からだとホテルの、お風呂場の石垣しか見えない。
温泉のお湯で気分が解れた僕は、自然に蒼空の方へ移動して、彼の右隣に座り直し、同じ方を見上げてみた。
「・・・わあ…本当だ。結構奇麗に見えるねぇ」
そういう風に考えられているのか、照明の灯りに邪魔されることも無く、星空がよく見えた。
空の下は四日市だろうか?コンビナートの灯が瞬き、星空との光の共演になっていて、とても綺麗だった。
「たまには良いもんだな、こういうのも」
「うん。そうだね…」
チョロチョロと温泉のお湯が流れる音だけが聞こえる、沈黙の時間が流れる。
しばらく二人で、そうやってただ景色を眺めて湯船に浸かる・・・。
こんな形の幸せも、悪くない。
「こうして…他の人とお風呂に入れる日がくるとは思ってなかった……」
「そんなもん、コレからはいつだって入れるさ。なんたって、俺がいるんだからな」
気を使ってくれているのか、蒼空は相変わらず星空の方を見たままだ。
「そっか……そうだね・・・」
僕は心からそう思い、呟くような声で答えた。
「………じゃ、そろそろお約束の時間だな?」
「うん。そうだ・・・ね?うん??」
・・・ん?おやくそく??
「お約束、その1ぃ♫」
不意に、腰の辺りがタオルで擦られた。
……のでは、無く。
「コレ、なああんだ?」
「え?あ、わ、あ、な、なに?え?ち、ち、ちょっ・・・」
蒼空の右手に握られていたのは、タオルだ。
……僕の、腰に巻いていた、アレだ。
・・・や、や〜ら〜れ〜たああっ!
ゆ、ゆだんしてたあぁっ!!!
