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仔犬のすてっぷ

第13章 優希の傷痕


「うん♪来てよ!夏美お姉さんも、みんなでいっしょに花火しよっ!」

 今夜は、サチお姉ちゃんが生理なので気持ち良い事は休みにして、みんなでいっしょに花火で遊ぶ事になっていた。

だから、まったく問題無いだろう…
そんな、軽く考えて夏美お姉さんに、それを教えたんだ。





その日の夜。

 大量の花火を抱えたリカお姉さんを見て喜びはしゃぐ僕を、アケミお姉さんは、どんな気持ちで見ていたのだろう…。
アケミお姉さんの横には、険しい顔をした夏美お姉さんがいて……

 僕が二人の方を見ると、二人はにこやかに笑顔で手を振ってくれていたけど……
僕は、あの二人が何かを言い争っていた事には気がついていた。

 リカお姉さんは、僕がなるべくそちらに気を取られないように、色んな事をして気を引いていたけど、やっぱり僕は気になって……。


「ねえ?せっかく沢山の花火があるんだもの。
皆で楽しくあそぼうよ?」

その二人に声を掛けに近寄った時。


僕は、何かを間違えていた事に、そこで初めて気が付いた。

 笑顔で答える夏美お姉さんの瞳に、わずかに光る涙があったのと……
アケミお姉さんの、厳しいけど僕を見る時は優しかった瞳が、冷たく蔑んだ眼に変わっていた事に・・・。




 花火遊びは1時間程で終わり、その日はそれでお開きになった。


帰り際、リカお姉さんから


「明日は中学校の旧校舎裏に集合だよ?もちろん、誰にも言わない事。
今度は、約束破らないでね…」

   
と、小声で伝えられて。



僕は約束を破ってしまっていた事に、そこで初めて気が付いたのだった・・・・・・。


 

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