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仔犬のすてっぷ

第13章 優希の傷痕


 次の日の夜。


 その日は小雨が降って、蒸し暑い日だった。
夜になっても涼しくはならず、また、夜の水泳の特訓をするんだと思っていた僕は、
“熱中症予防"だからと……
リカお姉さんから手渡されたスポーツドリンクをサチお姉ちゃんと一緒に飲んで………。




・・・目が覚めたら、拘束されてしまっていた。



そこは、旧校舎の、工作室。
防音のための二重窓に、分厚い壁の完全防音室だったこの場所は、これから行われる事にはうってつけの場所だった。


重い物を吊り下げるための滑車が付いた天井。

色々な工具類。

工作品を固定するための鉄骨の柱。

簡単に鉄を焼切るガスバーナー

油やその他、汚れ物が落ちても簡単に洗い流せるタイル張りの床に、人を丸ごと洗えるような大きなシンク。

沢山のロープや、ワイヤーや鎖。

汚れ物を拭き取れる沢山のウエス。



・・・こんな所で、僕は天井から吊り下げられて、身動きが取れないように固定されていた。

 少し離れた場所には
椅子に座らされたまま、鉄骨の柱にロープでグルグル巻にされ、項垂れたまま動かないサチお姉ちゃんがいた。


「…あら。やっと目が覚めたのね」


目の前には、タバコをふかしながらニヤニヤ嘲笑うアケミお姉さんと、リカお姉さんがいて。


「早速だけど、聞かせてもらうわよ?
どうして、約束を破ったのか、を、ね?
答えなさい、優希。なぜ、夏美に話した?!」

 いつもの威圧感とは全然違う、ドスの効いた声でアケミお姉さんが、僕を睨みながら聞いてきて・・・。
呼び方も、優くんでは無く、ただの呼び捨てに変わっていて。


・・・もう、それだけで怖かった。


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