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仔犬のすてっぷ

第13章 優希の傷痕


「・・・私は、夏美が嫌いなんだよ。良い子ちゃんぶって、いつも私等を仕切ってさ。
だから、アイツを私達と仲良くさせようなんて、余計なお節介をしたアンタは的外れで馬鹿な、世間知らずのタダのガキなんだよ!
この地区でアンタがいつまでも溶け込めないのも、全部アンタのその上から目線の性格の所為なんだよ!」


・・・僕は、この人のめちゃくちゃな話をただ聞くしか無かった。

 僕が溶け込めないのは、この地区が余所者をなかなか受け入れない、古い体質の所為だと思っていたし、みんなで仲良くする事の何がいけないのか全く分からなかったからだ。


「……へぇ…アンタ、随分反抗的な眼をするじゃないか…」

グイっと僕の顎を握るように掴んだアケミは、コチラを覗き込みながら嘲笑った。


「その方が、屈服させるには面白いよな?
……リカ、アレ、持ってきな?」

「…え?ホントに使うの?アレは流石にヤバイんじゃ・・・?」

「良いんだよ。まだガキだから、多少の傷や火傷の痕なんて、大人になりゃあ消えちまうさ」


「……いちおー、私は止めたかんね?」

そう言うとリカは隣の部屋へ向う。


「今のアンタはね、私達の所有物なんだよ。だから、私達の言う事は絶対に聞かなきゃなんないんだよ」

・・・僕がこの人の所有物??
冗談じゃない!
僕は、モノなんかじゃない!!


「う〜…もむまむ、むんむうみまむ…」

ジタバタと手足を動かすけど、やっぱり拘束は簡単には解けそうには無かった。


「ん〜〜!うん〜〜〜っ!!」

「ふふ…良いわね♡ちょっと待ってな?」

そう言うと、アケミも隣の部屋へ小走りで向う。


(サチお姉ちゃん……)
彼女も、なんとか拘束を解こうと体を動かして藻掻いているけど……望みは薄そうだった・・・。



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