
仔犬のすてっぷ
第13章 優希の傷痕
「……まずはアンタの覚悟を見せてもらおうかな?これで、泣いたり喚いたりしたら、幸にも同じようにしちゃうよ?」
(……何をしようって…え?)
カラン…
乾いた音と共に、真赤に焼けたソレが引き抜かれた。
鉄の柄の先には、太めの針金で作られた、何かが付けられていて…
「どう?針金で作ったにしちゃあ、なかなかの物だと思うけど?」
アケミは、ソレを直ぐ側に立て掛けてある木の板に押し付けた。
シュ〜〜…ッ……
木の焼ける匂いが、ソレの熱さを教えている。
・・・焼印。
作り方はともかく、それは焼印としては十分に機能していた。
焼けた跡が、蝶々の形となって板に残っている。
(こ…こんなもの当てられたら……)
だけど、アケミがやろうとしている事は分かっていた。
そして、僕はそれに耐えなきゃならない・・・
耐えられなかったらサチお姉ちゃんが・・・。
「ふ〜ん…これ見ても泣き喚かないのは褒めてあげるわ」
焼鏝を一斗缶に投げ入れて、アケミがこちらを見て嘲笑う。ガランっと重そうな音がして、火の粉が舞い上がっている。
「生意気だけど、そこいらの野郎よりは肝は座っているみたいね」
・・・泣き喚かないのは、サチお姉ちゃんを守るためだ。アンタに褒められたいからじゃない!
「じゃあ…実際にやられたら、どうかしら?」
カラン…と再び引き抜かれた焼印を、僕はただ、見つめるしかなく・・・。
身体からはアチコチから汗が吹き出し、涙も滲み……
歴史で習った奴隷達の気持ちが少しだけ解ったような気がした。
・・・ジュ、ジュウうぅーー……
「ーーふっっ!!んーーーーーーーーっ!!!」
左脇腹…鳩尾の辺りで激しい激痛が走る。
身体は硬直状態しながら、ビキビキと激しく痙攣し、大量の汗が身体中から吹き出し、涙が溢れ・・・・・・。
……でも、僕は声は出さなかった。
歯を食いしばり、ただ、耐えた………。
