
仔犬のすてっぷ
第15章 嵐の予感
・・・ふぅ★間に合った……。
「ほんと、こういう時、無駄に広いと困るよね」
「…はぁ…はぁ…そ、そうだな……」
4つ、男性用チューリップが並ぶこのトイレで、普通なら1つ開けて用を足すところをわざわざ隣りに来て用を足す従業員さん・・・。
肩で息をしているところを見ると、どうやら彼もギリギリセーフで駆け込んで来た……クチ…らし………い?
………ん?
・・・なんだろ?この違和感……?
「アンタ……見かけより脚が早いな…」
そう言いながらニカッと笑うオッサン従業員…
あ。
そうか。
従業員が、この時間に、この手洗いを使うはずが無い事に……今、気が付いた。
この時間…入場口は門が閉まっている。
ゲートの近くには、中と外にトイレがある。
開園前に遊園地のアトラクション係員が、トイレに行くなら中ですれば良いわけで……
わざわざ門を開け、ここで用を足すなんて事は無いはずだからだ。
「・・・スマンがちょっと…俺と付き合ってもらおうかな?…あ」
なんだか分からないけど。
怪しさ1000%のオッサンの、お決まり台詞が始まると同時だった。
貴男の台詞はどーでもいいんで!
始めっから聞く気はありませんしぃ。
こういう時は、兎に角っ!
走って、逃げる!脱兎のようにっ!!
