
仔犬のすてっぷ
第15章 嵐の予感
「……探偵?!」
桑名の警察署で事情聴取を受けていた僕等は、話をしていた警官から説明を受けていた。
「彼らは、名古屋の駅裏辺りで商売してる調査員…いわゆる、探偵だ。
前金いくらで、あとは成功報酬をもらうとうカタチで雇われてて、依頼主の事は……スーツに身を包んだ、独特な女性が窓口になっていたと言うこと以外は詳しくは分からんらしい」
た…たんてい・・・
確か、以前……僕んちを襲った二人組も、そう言えば探偵だったと聞かされている。
「・・・また、あの糞マダムの指金か?……ったく、しつけぇな」
「クソマダム?誰かね?ソレは」
警察官のおじさんが、怪訝そうな顔で蒼空を見る。
「記録を見ると、君等は以前も自宅にいるところを襲撃されている様だが……それも、その人物の差し金だと言う事かね?」
何かのファイルをぺらぺらとめくりながら、警官のおじさんがそう話すと
「・・・多分…なんですがね。証拠は無いし、以前の連中と同じで足が付かないやり口。パターンは同じだから、恐らくは・・・ってだけなんですが」
ガリガリ頭を掻きながら、蒼空は警官のおじさんに説明をしている。
苦虫を噛んだような彼の顔からも、面倒くさい事になっている事が分かる。
「そのマダム…名前は分かるかね?」
「あ、えーと…一応、うちらの商売柄、お客の情報は秘匿義務があって………」
「……彼女の名前は 桜明 美南(おうめい みなみ)
週刊誌オードリーの編集部の記事管理オブサーバーでもあり、雑誌社の出資者でもあるわ」
カツ!カッ!カッ!とハイヒールを鳴らしながら歩美さんが聴取室に入って来た。
今日は薄いピンクの麻で出来た夏物のロングジャケットに、この間とは柄は違うが同じ赤色のチャイナドレスという…定番らしい姿だ。
