
仔犬のすてっぷ
第3章 風海 蒼空 (かざみ そら)
『え?!なに、バラちゃんなのにHげー?』『なに?ちょ、萌』『どんなゲーム?』『おねーさんは聞き捨て出来んな』『つーか、バラちゃんスケベ♡』『私ちょっと引く〜♡』『なんかもったいな〜い』
(・・・だ、誰もHなゲームだなんて言ってないのに……(汗))
『あのゲーム、ミーノちゃんが可愛くて、ソレを好きに育てられるゲームなんだよ。俺もやってるけど、オトコのロマンだよなあ〜…』
あ、馬鹿。
安ちゃん(やすちゃん)そんな事言ったら……
『え?何?マウントゲーム?』『安ちんキモ』『女の敵ゲームや』『オトコのロマンは女の敵や!』『アータには聞いとらん』『マジキモいんですけど★』『変なもん想像さすな!』『インカム外せ下郎が』『サイテー!』『仕事場換えろ!』
目の前の安ちゃんの体が灰色に染まった。
タテ線の効果線が、はっきり見て取れる。
「……わ、私…男の子なら、自然な事だと思うけど……インカムでそれを話すのは«ちょっと…ダメ»かなぁ?」
淡海ちゃんが、フォローでなんとかしようとしたようだが、彼女の“ちょっとダメ”の台詞にわずかな棘があったらしく…
安田一氏は、夏場のエアコンの送風の強さにすら耐えられず、さらさらさら…と、塵になって消えていった……
哀れな奴…(苦笑)
『あ〜…業務連絡。インカムを私語に多用するんじゃない』
若干機嫌が悪そうな低い声で、石橋主任から通信が入る。
『インカムはお前等の玩具じゃない。仕事の道具だ』
石橋主任は、普段、仕事中はあまり話をしない、口を開けば叱咤、激が飛ぶような、怖いイメージがある人だ。
昔は暴走族の頭だった、とか、ホールで遊技台を壊したチンピラを、その“威圧感”だけで泣かして謝らせたなど…さまさまな噂がついて回る。
はじめ、転勤してこの店舗に赴任してみえた時は、みんな緊張して挨拶していたが……。
