
仔犬のすてっぷ
第3章 風海 蒼空 (かざみ そら)
『……だが、バラちゃんは玩具にしてよろしい。
……つーか、バラちゃん、そのゲーム、なんで黙って先に買う?一緒に買いに行くっつーてたやんけ!』
・・・はい。お約束通り、見た目とは真逆のお方です(苦笑)
実にフレンドリーで、部下思い。
専学卒業後、このままここで働く事を薦めてくれた人でもある。
『…業務連絡。皆さん、そろそろ忙しい時間帯になります。真面目に仕事に取り掛かってください』
間髪入れず、違う人からの通信が入る。
店長の、森川さんだ。
事務所では、店内のカメラや遊技台の様々なデータ、そしてインカムレシーバーの会話などすべて聞いたり見たり出来る。
だから、当然この会話もモニターしながら通信しているはずで。
(ヤバイ…流石に叱られるな……)
あまり、部下を怒鳴ったり、叱ったりする人ではないが、人を見る目は、物凄くある人で。
ちょっと悩みや、不安、本人が気付けていない体調不全まで見抜く感の良さ…
というか、もしかして感応能力者(俗に言うテレパシスト)じゃないかって思うほど、先見の眼がある人だ。
『…それと、林原。休憩時間が回って来たら私の所に来なさい』
・・・あちゃ〜…
やっぱ、なんか、叱られそうな気がしてたんだよ〜(泣)
目の前の淡海ちゃんと、店長のインカムの声で復活を果たした安ちゃんの、二人の目を見て、僕は小さくため息をついた。
すみません…って。
・・・・・・。
怒られるの、僕だけ?!
