
仔犬のすてっぷ
第3章 風海 蒼空 (かざみ そら)
「林原。ミステイク!」
事務所の扉を開くなり、森川店長からこの声が飛んできた。
バスケの審判がやる、両腕を手前で交互にくるくるさせる動作(へんなおじさんのダンスの最後の方でやる、あれ)の後、こちらにビシッ!と人差し指を突き出して、店長がニヤッと笑う。
森川店長のミステイク・ジャッジは、叱られる一歩前の警告だ。
コレを無視、あるいは軽視していると、後からとんでも無く辛い思いをする事になる。
そして、ソレは店長から叱られるよりも、先に実際に体感して、痛い思いをする事の方が多く……
つまり、相当に気を付けなければならない何かをやらかしている、ということで。
「林原ぁ…お前、ゲームのやり過ぎ、ヌキ過ぎであんな顔してた訳じゃあるまい?」
は、はううぅ〜…(汗)
な、何か分かんないけど、何故か何かがバレているぅ!
「て、てんちょー…??」
「俺に隠し事や嘘が通じないのは知ってるだろ?ゲンコツ落とされる前に、お前から話せ」
この人…顔が〈大○の源さん〉みたいで、いつも目が燃えてる感じ……見られてるだけで、嘘付かせない “圧力” が半端ないんだよなぁ……。
「・・・じ、じつは・・・」
ど、どうしよう?
本当にこのまま、全部話す?
蒼空の事を話して…
お店の人達に、迷惑かけてしまう……
そんな事になったら、どうしよう……。
