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仔犬のすてっぷ

第18章 来訪者たち



『…それで、ご要件は?まさか、そこにいる男性3人と、外に控えてる数人でウチの店を利用しに来た…なんて事は無いんでしょ?』

『当たり前でしょ?私個人的な来店なら兎も角、このメンツでボーイズ・バーを利用なんかする訳無いじゃん。ちゃんと別の用があって来てるからそっちは気にしなくていいわよ』


 ぱちんっ★と里香が指を鳴らすと、付添の男が胸元から分厚い封筒を出し、彼女に手渡した。


『100万円。この間の坊やを借りた時のお金よ。まだ払ってなかったから、うちの桜明が払って来いってさ』


 そう言うと封筒を目の前のテーブルに丁寧に置いた。


『・・・あら?わざわざこれを払いに来たって訳?けど、これならもう必要無いわ。
貴女の御主人様は、もううちのリストにはブラックな扱いになっているから、今更お会計されても変わらないわよ?』
『私もそう進言したんだけどねぇ……受け取る訳無いって。だけど人の話は聞かない御人だからねぇ・・・』


わざとらしく大袈裟に肩をすくめ、溜息をついてみせた里香は


『・・・まあ、それはアンタも同じか。このお金…持って帰る訳にも行かないから・・・』

 そう言うと、再び封筒を手に取った里香は、懐からタバコの箱を取り出し、タバコを咥えた。
そのまま小洒落た細身の電子ライターで・・・


『あ〜あ。もったいない♪』

 封筒に火を付け、その火でタバコに火を付ける。
火の着いた封筒を灰皿に投げ置いて、燃えるのを見ながら里香はニコニコ笑っている。


「あ〜あ。もったいねぇ・・・」

イ▽ーク・潤がそう呟いたけど、それには周りの仲間は誰も同意はしていなかった。
本質は潤も同じかもしれないけど……


「冗談でもそれは口に出しちゃいけないだろ?」

ア△ラン・アキラが軽く潤の頭を叩いた。




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