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仔犬のすてっぷ

第18章 来訪者たち


『・・・で?その偽金の封筒を燃やすためにわざわざうちに来たのか?』



・・・偽金?

 ディオ・森川がキャラになりきって、戯けながら言うのを聞いて、僕は少しほっとした。
いくらなんでも、本物のお金を燃やすなんて…と内心はそう思ったからなんだけど。


『あら?バレてた?本物は、こっち♡』

里香は胸元から茶封筒をちら見させ、また中へ戻す。


『少しは動揺してくれるかと思ったのに、ざ〜んねん★』

『大切な金だ。アタッシュケースでもない限り、守銭奴なお前らが部下に預ける訳がないと思っただけさ』

 三編みの毛をわざとらしく後ろへ流しながらディオ・森川は吐き捨てるように言った。



『・・・んじゃ、そろそろ本題。
遊びが過ぎたから、今度は単刀直入に言うわ。
風海蒼空とカリーム・ムテイリー……
この二人を貸して下さらない?』

タブレット越しのこの台詞に、僕の後ろ3人がざわついた。


「何言ってやがるんだあの女・・・」
「あのクソアマ、言うに事欠いて・・・」
「蒼空はともかく、王子だって?!」

「・・・僕がどうかしましたか?」

 声の方へ振り返ると、しっかり蒼空に小突かれたアキラの後に、カリーム王子がきょとんとした顔で立っていた。


『お前、アホだろ?んなもん、貸す訳・・・』
『アンタにゃ聞いてない!お呼びじゃないんだよこの三流役者がっ!!私が聞いてんのは幸、アンタにだ!』

 画面の向こうでは、後で自分が言った言葉を後悔する事間違いなしの台詞を森川店長に叩き付ける、怖いもの知らずな里香の怒鳴り声が響いている。


『・・・里香?アンタ・・・・』
『…なによ?』




『アンタは今、自ら勝手に交渉を決裂させちゃったねぇ・・・』

歩美さんは、目の前で粋がっている元友人に、哀れみを含んでいる言葉を投げかけた。



『・・・は?なにいって・・・え?・・・』



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