
仔犬のすてっぷ
第3章 風海 蒼空 (かざみ そら)
「…林原…?」
いつもじゃない、僕の反応にすぐに気が付いた森川店長は、
「よし……石橋、助野、ちょっと、店を頼む。・・・林原、私服に着替えろ。俺の車で待て」
「え?え?!あの・・・」
「バラちゃん、大丈夫。店長の言うとおりにしておきな」
石橋主任が僕の肩を叩き、助野主任が店長のセカンドバッグを店長に手渡す。
「こういう時の森川は頼りになるぞ?甘えとけ」
助野主任は、僕の背中をぼん!と叩いてウインクをばしっ!とこちらへ投げた。
「お前、分かりやすいんだよ」
着替えた僕が店長の車に乗ると、彼はすぐにエンジンをスタートさせた。
「なんか、厄介モノ、拾ったろ?」
「な、なんで……」
「質問に対しての “間” と挙動、目の動き、声のトーン…それが違い過ぎだ。
多分付き合いの長い連中ならすぐに気付く。安とか淡海ちゃんも、おそらく気が付いてるはずだ」
・・・そ、そんなに?
そんなに分かりやすいのか?僕……(汗)
「俺の場合は、まあ、それだけじゃ無いが……なにしろ、場数が違うからな」
………店長……
なんか、貴方、何処かの刑事ドラマの主役みたいです…とは突っ込めず(汗)
あっという間にウチのアパートの近くに到着時する。
「……まだ、出るな」
アパートの駐車場まで行かずに、急に止まった理由が分からず。
ここから歩いて帰れという意味だと思っていた僕は車から出ようとして止められた。
「…お前の部屋の電気は点いているが……周りに何か、いつもと違う点は無いか?」
森川店長にそう言われ……周りを注意深く見渡して見たけど……特に変わった様子は見付けられなかった。
「…よし。とりあえず一度部屋へ戻れ。
部屋の鍵開ける前にスマホで俺の携帯に繋いで、切らずに部屋に入るんだ。分かったな?」
僕は頷くと、車を降りて部屋へ向かった。
