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仔犬のすてっぷ

第18章 来訪者たち


「たらればろん??」


「オーナーがその二人に言わなくても、機会があれば優希に手を出したかもしれないし、優希がその日に連中に会いに行かなくても、何処かで襲われていたかもしれない。
『行かなかったら』『注意していたら』は、結局、俺らの頭の中での話でしかない…って事さ」


「・・・良い事言うじゃない☆
脳みそ筋肉の貴方がそんな事言うなんて・・・嵐が来るんじゃない?」

 幸お姉ちゃんは、蒼空の言葉に目を点にしたあと、笑いながら蒼空の頭をわしゃわしゃと撫でている。


「っちょっ?!・・・いつまでも子供扱いしないでくれよオーナー!」

「…蒼空、ありがとう。なんか、少しだけ楽になれたよ」

僕はさっきの彼の言葉と、今の二人の風景に和まされて・・・なんか嬉しい涙が出そうだった。



「……蒼空、さっきのセリフ・・・以前、お前がカリームに諭された時のそのままパクリじゃん」

 通常の制服に着替えたアキラと潤が、ニヤニヤしながら蒼空の肩を叩いて言った。


「しかも、誰かさんとの恋愛相談・・・」
       「だぁ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」


 バタバタと両腕を振りながら、蒼空は何かを聞き取れないように大声を張り上げ、喚く。


「・・・・・・?」

 おかげで僕は潤が話した後半は聞き取れていない。

「・・・ま、とにかく、だ。
相手(オーナー)がやった事も、お前の後悔も、もう、過去の出来事なんだからよ?今、こうしてわだかまりの事もお互いに話せたんだし、お互いに許し合えれば、それでいいんじやないか?」

「……蒼空……」
「……そう…ね、蒼空」


「・・・んもう!やっぱり、蒼空ったらちゃんと成長してて、かわいいんだからあ〜♡」

「わあっ?!だから、オーナーぁ!俺は子供ぢゃないんだってばあ〜!」


 また、幸お姉ちゃんに頭をワシャワシャされた蒼空が悲鳴に近い声を上げているのを、僕等はみんなで微笑ましく思いながら見ていた。
多分、幸お姉ちゃんの照れ隠しもあるんだろうけど、ちょっとだけ、昔幸お姉ちゃんに強く抱きしめられた時の事を…僕は思い出していた。



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