
仔犬のすてっぷ
第18章 来訪者たち
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警察からの事情聴取が現場で行われた後、詳しい話をするために森川店長と幸お姉ちゃんは警察署へ向かった。
別れ際
「こりゃあ…現場検証やらなんやらで2、3日はボーイズ・バーは休業だな…
蒼空、なんならパチンコ屋で働いてみるか?」
森川店長からのお誘いに
「まあ、それも悪くないかもな」
と、苦笑いで返した蒼空は、僕を含むパンドラの店員達と二人を見送った。
「…さて、じゃあ……お客様達をお送りしますか」
やっと現場検証から開放され、足止めされていたお客様を近くの地下鉄、バス停、タクシー、マイカーへ皆がエスコートしていく。
アキラも潤も、奈緒ちゃんの友達をそれぞれがエスコートして送っていった。
「奈緒ちゃん・・・帰ろっか?近くまで送るよ」
「・・・うん。ありがとう」
さりげなく、奈緒ちゃんの肩を抱いて、歩き出すと・・・。
「俺も付き合うぜ?どーせ暇だしな」
蒼空もそう言って、僕らの少し後を歩いてついてきた。
「蒼空君…もっとこっちにおいでよ?一緒に歩こう?」
奈緒ちゃんがそう言って手を差し伸べたが
「ん?遠慮しとくよ。二人に悪いし…」
ジーンズのポケットに両手を突っ込んだまま、のそのそと歩く蒼空に、奈緒ちゃんの手が伸びる。
「え?」
「ん?」
右手を僕の脇に、左手を蒼空の脇に差し込んだ奈緒ちゃんは、僕らと腕を組むようにぐいっと引き寄せる。
「遠慮しないで。
私達、あんな事を経験したばかりなんだもの。特に危ない目には合わなかったけど、ひとつの出来事を乗り越えた仲間でしょ?」
・・・なんか…今日の奈緒ちゃんは積極的だなぁ……。
「・・・それに、蒼空君と優くんには聞きたい事があるからね?」
ん?聞きたい事?
僕らに聞きたい事って、なんだろう?
