
仔犬のすてっぷ
第19章 過去との再会
「俺の名前はトーマス・村田だ。トーマスって呼んでくれ」
にかぁっと、屈託のない笑顔で笑いながら…って、ちょっと!
こ、ここでいきなり…名乗っちゃうの??
ふ、普通…僕を痛めつけたりとかした後に、冥土の土産だ、とか言って無理矢理名前を覚えさせようとしたりして、名乗るものなんじゃ、無いの?
「ここは、港区の廃工場だ。使われて無いのを無許可で使ってる。電源は無理矢理拝借したみたいだから、多分長くは使えねえな」
・・・ですから!
捕まえた相手に、そんなにぽんぽん情報を与えてどーすんですかぁ?!
「嬢ちゃん達のスマホは、電源落としてそこの机の引き出しに入れてある。大丈夫。ちゃんとビニールに入れて保管してあるから、心配は要らないぞ」
・・・僕は、貴方が色々心配です!
「……それわどおも……」
僕は、なんとかそれだけ言って返す。
ツッコミ入れたくて、でも入れられない……コレはもう…一種の拷問では無かろうか?(大汗)
「…ちょっと、トーマス!気が付いたら呼びやあせって言うとったがねっ!」
「ああ、スマンスマン。つい、話が満開に咲き乱れてな」
あ、ああ、もうっ!また、そうやって自分から墓穴を掘って報告してえ!!
ツッコミが…ツッコミがあぁっ!(怒)
「……ちょっと……獲物の息がエラく上がっておるけど、おみゃー何かしやあしたん?!」
「いや、別に」
今までの会話の流れ……この人に聞かせてやりたい(苦笑)
眼の前で腕を組む女性も、見た目外人さんみたいだけど……
「まあすぐ、桜明さんが来るでよぉ、まあ少しまっとりゃあせ、なも?」
今時、名古屋人でも市長さん以外は使わないようなバリバリの名古屋弁で話す、筋肉美が垣間見える美人の外国人・・・
単なる人選のミスなのか、それとも強さを求める人間は何処かおかしいっていうお約束なのか、はたまた何も考えない人選だったのか・・・
なんか、桜明が来たらぜひ聞いてみたいんですが(汗)
