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仔犬のすてっぷ

第19章 過去との再会



「…待たせたわね、林原優希君」

 数分も経たずに目の前に現れた、桜明と思われる女性は僕を見るなり


「・・・なんか、アナタ……随分疲弊してない?」

「いえ、ちょっと……」


「トーマス!サラ!アンタ達、何したの?!」

「いや、別に」
「うちは何もしとりゃーせんでぇ?」

「この二人に、ただ疲れただけなんで気にしないで先に進めてください……」

「あ、ああ、なるほど。
私もね……時々疲れてね〜…」

「「はあぁ〜〜…(*ためいき*)」」

桜明らしき女性と僕のため息が重なった。
まあ、悪者だろうが、そうでなかろうが、あの二人に付き合ったら疲れる事は間違いない(苦笑)


軽く咳払いした目の前の彼女は


「…まあ、多分分かっているだろうけど、私が桜明美南よ。お久しぶりね、優希」

と、自己紹介をした。


「・・・まあね。流石にここまで来たら、予想は付くよ、明美お姉さん」


強がって虚勢を張るわけではなく

 里香お姉さんに幸お姉ちゃんと来たら、後は夏美お姉さんか明美お姉さんしか、思い当たる人はいないし、夏美お姉さんが変な方向へ進む事もあまり考えられない。
 なにより、桜明の名前の中に、『明美』の名前が入っているし。


「・・・僕の方を捕まえて、蒼空に情報交換の取引に使うつもりなんだろ?」


 少し明るめのスーツ、赤く染めたロングヘアー…
化粧は、あまりキツくはなかったけど……蒼空が“マダム”と呼ぶ理由が分かった。

 里香や幸お姉ちゃんと比べると……少し、歳上に見えるからだ。

その桜明…明美お姉さんが、ふっ…と鼻で笑ってからこう答えた。


「・・・そうね。それも、まあ、有りかしら?
確かに、一番初めはその、彼の持ってる情報が欲しかったからね。
……でも、今は」

さらに一歩前に踏み出した明美は、ニヤリと笑いながら話を続けた。



「私が欲しいのは、アンタだよ、優希」



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