
仔犬のすてっぷ
第19章 過去との再会
「・・・言ってて恥ずかしくありません?」
(僕はこんなふうに面と向かって改めて言われると、色々と恥ずかしいんだけど…(汗))
実際、僕の顔は赤くなっているはずで…
顔が少し熱い。
「……うるさいわね。
改めて、アンタにそう言われると、恥ずかしくなっちゃうじゃない」
目線を少しずらし、少し赤面しながらそう呟く明美は、あの頃壊れる前の“お姉さん”に戻っているみたいだった。
「……けど、ここまでやってるんだから、私の本気度も分かってるんだろ?」
「解りませんよ。そこまで僕にこだわる理由が。
僕よりイイ男なんてそこら中にいるでしょう?」
それこそ、ボーイズ・バーや男の子を売りにしてる店に行けば、こんな犯罪じみた事しなくても相手にしてくれる男だって・・・。
「いないんだよ、そんなもの。
どいつもコイツも、私の体かお金目当てのヤツばかりで・・・私の周りには私を見ようとしてくれる…そんな奴は現れなかった!」
「そんな事は無いって!現に・・・」
里香は、多分貴女が好きなんだ!と言いたかったけど・・・ちょっと躊躇う。
僕は、警官に連れて行かれた時に幸お姉ちゃんに吐き捨てるように言った、あの
『アンタには解らないよ。多分、一生ね』
あの言葉は、多分……そういう事なんだと思う。
でも、明美は同性同士を、彼女は多分……カウントしてない。
「イイオトコ?そんなモノ、私はもう、望まない!
私が欲しいのは、私の気持を全部受け止めてくれる、そんな存在だけよ!!」
瞳を潤ませ、僕を睨む明美さんに・・・
僕はただ、圧倒されてしまった。
あの事件の後、彼女に何があったのかは僕には分からない。
だけど、彼女の言っている事は分からなくも無い。
だけど、それと僕はつながらないだろう?
「僕は貴女の望みを叶える人間じゃありません。そんな器の大きな男じゃないです」
「器がどうこうじゃないの。私の気持ちを解るか解らないか・・・それが大切なのよ。
貴方は、他人の気持ちを理解出来る。それが判っているから、アナタが欲しいのよ・・・」
・・・なんで?どうしてそこまで僕にこだわるんだ?
他人を理解する…なんて、誰だって出来る事じゃないか。
「……どうして、そんなに僕にこだわるんですか?」
