
仔犬のすてっぷ
第4章 攻防戦?!
「え?目を…って?」
頭をガリガリ掻きながら、苦笑いして警句を伝える蒼空に、僕はキョトンとした顔で返す。
「俺もそのクチなんだ…ってか、ウチの店にいる連中は、大体オーナーの“オキニ”なんだよ」
「おきに??」
「お気に入りってやつ。
俺、元々湘南の海の家で普通にバイトしてたんだけどさ、客として来たオーナーに、
誤ってビールかけちゃってさ。
俺としては普通に謝って普通に対応したつもりだったんだが、そこで妙な具合に気に入られてちまって。
以降校門の前であのカッコで待ち受けてるわ、行き付けのコンビニの店員になりすまして待っているわ、マーシャルアーツの道場に道場破りに現れるわで……」
は、ははは・・・
そりゃあ、また、とんでも無い御仁に気に入られてしまったかもしんない…(苦笑)
「・・・さ、蒼空。そろそろ御暇(おいとま)するよ。コレ以上ここにいるとモリリンに襲われちゃうから♡」
「誰がっ!……さあさ、帰った、帰った!」
あの二人は…きっといつもあんな感じの関係なんだろう(苦笑)
そっか……
これで、蒼空とはお別れ、なんだな。
そしたら、次はいつ会えるか…分かんないってことか・・・
…なんか、少しだけ寂しい気もする。
「アンタの作ってくれたメシ、美味かったぜ?また、食いに来ても良いか?」
頭を掻きながら、少々照れくさそうに言う蒼空に、僕は笑顔で返した。
「ああ。あんなんで良ければ、また食べに来てよ。
待ってるから、さ☆」
「…やっぱ、アンタの笑顔、最高だ♬」
「またバカな事言って…ま、楽しかったよ」
僕と蒼空は、軽く握手をし、
そして、蒼空は歩美オーナーのリムジンに乗り込み、帰って行った。
「林原、お疲れさん。
右肘あらかた治るまでの一週間は、有給消化も兼ねて休むように」
森川店長は、僕の肩をぽんぽんと叩くと、今夜の仮住まいとなったビジネスホテルまで僕を送ってくれたのだった。
