
仔犬のすてっぷ
第32章 決着
どさっ・・・
金髪の女性が…向こうを向いたままゆっくりと倒れ込んだ。
「ーー サラッ!?」
トーマスの呼び掛け声が、廃工場の中で木霊する。
「はぁ…はぁ…余計な、マネを…咄嗟に軌道を塞ぎましたか…」
……き、霧夜…。
トーマスに膝を割られ、さらに袋叩きにされて動けないはずじゃ……?
「連れて帰れないのなら、残りの依頼は……
林原優希ぃ!!死ねええぇッ!!!」
霧夜の拳銃の銃口が、ゆっくりとこちらに向けられる………。
駄目…だ。それは、避けられない……。
こんな時…未来予測の能力はただの死の宣告でしか無かった。
ーー バアアアァン!
熱く焼けた鉛の弾が、生きているものの肉へ突き刺さる音が………。
僕の体に…撃ち込まれて……僕は死ぬ。
「……優希…」
拳銃の弾は、僕には届かなかった。
二発目を撃った直後、フルパワーのトーマスの蹴りを受け、工場の鉄骨に激しく叩きつけられた霧夜は…今度こそ動かなくなった。
「・・・・・そ…ら……?」
「……見たか?未来…予測超えだ。
ついに、テッポーの…弾のスピード……超えてやった…ぜ?」
僕の目の前には…
蒼空の大きな背中が……あって。
「うそ…だ…よ、ね?」
「嘘じゃねえ…ぜ?…凄え……だ…ろ?」
それが、ゆっくり……崩れていく。
「い…やだ……」
両膝を地面に着き、動きが一度止まる……。
僕を……庇うために……
僕の、未来予測……超えたっていうのかい!?
そんなの……
「そらあぁっ!そらああああぁぁっ!!」
彼の背中にしがみ付き、倒れないように支えるけど……力が入らない蒼空は、そのままこちら側へゆっくりと倒れてきた。
ぺたん…
尻餅をついた僕の膝の上に、頭を乗せて……
蒼空は、ゆっくり息を吐いた。
「いっ……いやだ…そんなの、いやだ……」
「仕方…ねえ…だろ?……お前に…死なれちゃ…俺が困っちまう…から…な?」
そう言うと、蒼空はゆっくり目を閉じた。
「そおおらああああああぁぁっ!!」
