テキストサイズ

仔犬のすてっぷ

第5章 他人と自分と


「…そうなのか?」

蒼空がこちらの様子を見ているのか、背中越しでも伝わってくる。
上手く鍋を片付けるタイミングだったので顔を見られずに済んでいるけど…。


「今は元気で地元で生活してるけど……当時は大変だったみたいだよ?不登校になったりしてさ」

 嘘をつくのは正直、良く無い事は分かってる。けど、本当の話は・・・
今まで誰にも話したことは無い。

 当然、親にだって相談できるはずも無く…
どうしても話さなければならない時は、多分、相手ありきで“その時”が来た時だけだろう。


「・・・そうか。今は普通に生活してんなら、問題は…無い、か……」

背後で話す蒼空の言葉には、なんとなく含みがあるようにも聞こえて……。

(それは、きっと僕が嘘をついているからだ……だから、相手まで疑っちゃう。蒼空は、心配してくれているだけなのに)

……こんな自分、嫌いだな…。





「なあ?ところでこの《魔法少女達の散華》ってゲーム。面白いのか?」




・・・は、はい?!

 聞き覚えのある、そして他人様にはあまり知られたく無いキーワードが聞こえてきたので振り返ると、そこ(リビング)には蒼空は居なかった。



「いわゆるHゲームってやつだろ?俺、やった事無いんだよ。やって良いか?」


 声はパソコン置いてある寝室から、聞こえてくる。


待て待てマテマテ〜〜っ!!

イケメン君は、そーゆーことしちゃ、イケません!!
………ってのもおかしいけど、ひとん家のパソコン、勝手に見て、何しようってんですか?!


ストーリーメニュー

TOPTOPへ