
仔犬のすてっぷ
第6章 優希の経験
この頃の僕は身長が120センチにも満たない身長だった。
中学の前を歩く僕を見た女子中学生達は、そんな僕を見て、
ランドセルが歩いているみた〜い♡
かわいい〜〜♡
……などと、はじめはキャーキャー騒いでいるだけだったけど。
(ランドセルって・・・(汗)
そりゃあ、背は低いのは認めるけど……)
とりあえず、愛想笑いと挨拶を返す。
最初はそれだけの事だったのに。
ある日、その中の一人のお姉さんが
「キミ、山田光江って子、クラスにいるでしょ?」
と、聞いてきたので「いるよ」と答えると。
「光江は私の妹よ。私は夏美。山田夏美。よろしくね☆」
……そしていつの間にか、彼女を中心としたファンクラブまで勝手に結成され(汗)
……同級生の友達は、いない訳ではなかったけど、父の仕事の関係でこの地に引っ越してきて保育園に入ってから、今までずっと何かに付けて
“よそ者”
扱いを受ける事が多かった僕は、単純に、こうしてちやほやされるのが本当に嬉しかった。
そして、その時…
夏美お姉さんはいなかったけど、彼女といつも一緒にいる友達の中の三人が、中学の正門から、ダッシュで走ってきて
「お誕生日、おめでとう♡
これ、皆からのプレゼントだよ♪」
そう言って渡してくれたのは、大きな白い犬のぬいぐるみだった。
「……あの、これ…ホントにもらっても、いいの??」
「もっちろん☆それはみんなでお金を出し合って買った、君のためのプレゼントなんだから♡」
可愛くて、大きくて、柔らかくて、フワフワ・・・
思わずギュッとぬいぐるみを抱きしめると、三人のお姉さん達はキャーキャー騒いだ。
記念写真まで撮られて、僕は舞い上がっていた。
この時に気が付くべきだった。
夏美お姉さんが、いなかった事の意味に…
