
仔犬のすてっぷ
第6章 優希の経験
家に帰ると母がビックリして僕を出迎えた。
そりゃあ、そうだろう。
自分とほぼ大きさの同じ、でっかいヌイグルミを担いで、息子が帰ってきたんだから。
ヌイグルミにくくり付けられていた誕生祝いのカードを見て、母もこの珍事の経緯を理解してくれて、素直に喜んでくれた。
自分の部屋に戻ると、僕はポケットから小さな封筒を取り出して中身を読んだ。
『コレは、ここにいるお姉さん達と、キミだけの秘密のお手紙だから、絶対に他の人に見せちゃダメだよ?♡』
そう言われて、僕は初めて歳上の人とのヒミツを共有するという、甘い魅惑にときめいていたのかも知れない。
いつもなら、例えヒミツだと言われても、父か母に相談したはずだったから。
手紙には
君が泳ぎが苦手なのは知ってるよ。
私達の中で1番泳ぎが得意なお姉さんが、水泳教室の先生よりも上手に教えてあげる。
水泳の用意をして、夜の8時に中学校のプールまで来てね。
PS・他にも色々教えてあげるから、楽しみにしていてね♡
夏美・明美・里香・幸 より
(あ…ちゃんと、夏美お姉さんも来るんだ……じゃあ、大丈夫かな?)
僕は、正直、夏美お姉さん以外はあまり名前を覚えていなかったし、あまり信用はしていなかった。
ただ、アケミっていうお姉さんは、汗を拭き取ってくれたり、スポーツドリンクをくれたりしたからなんとなく覚えていた。
(アケミお姉さん……何かにつけて体を触るから…あまり好きじゃないけど……)
