
仔犬のすてっぷ
第7章 過去と今と…
「・・・合鍵、駄目なの?」
はい、差し入れ♪と、タッパーに入った煮物とサラダを手渡しながら、淡海ちゃんは小さくため息をついた。
「1つだけならなんとか誤魔化せるかもしれないけど、合鍵は基本、マスターキーと別に2つまでって、賃貸の決まりがあるからね」
防犯上の理由から、そういう決まり事があるらしく……6つの合鍵を大家さんに見せた時には流石に呆れていたが、全部を渡すことで許してもらえた。
「じゃあ、ドラマで合鍵渡したりしてるのは、ホントは駄目なんだ?」
「そういう事。基本的には違法行為になるから、大家さんによっては民事裁判まで持っていく人もいるみたいだし……
まず合鍵を作る場合は、一度大家さんに相談してからにしなきゃだめだからね☆」
「優希、どこ向いて、誰に向かって話してるんだ?」
キョロキョロと辺りを見回しながら、蒼空が僕に軽いツッコミを入れた。
「キミに向かって、解りやすく説明したんだよ」
そう言うと、僕はポケットに手を突っ込んで深いため息をつく。
「……ったく。事件があった後のドサマギだったから、まあ、手違いでこうなったって話にして、なんとか許してもらったけど……
普通の状態だったら、退去させられても仕方が無いところだったんだからね?」
「ごめんね~?知らなかったから、勝手にお願いしちゃった……」
「淡海ちゃんは、悪くないよ。悪いのは・・・あれ?いない??」
蒼空は…空気が悪くなったからか、気付いた時にはもう、ここを離れていた。
「……ったく。逃げ足は早いんだから…」
呆れる僕の隣で、淡海ちゃんがくすっ☆と笑った。
