
仔犬のすてっぷ
第8章 お出かけ♪
「大丈夫か?顔色、青いぞ?」
「…なんで……あんなの…に……乗って……そんな……涼しい顔出来る?」
僕は恨めしい顔で蒼空を見るが、彼は最高のアトラクションを終えた、楽しかった感満載の顔しかしていない。
「そんなんじゃ、すぐにメシとかは無理っぽいな……ちょっと待ってな」
そう言うと、蒼空はすぐ近くの売店へ向かい、ソフトクリームを買ってきてくれた。
「ほれ。そんな時はコイツが1番。冷たくて甘いものは、結構効くぜ?」
まだ、むねがムカムカしていたけど……
我慢して一口、食べてみる。
「……うまい……」
甘いもの…バニラの甘い香り…
普通なら、吐き気が戻って来そうなのに、口から、喉から、そして胃のムカムカまで、スッキリしていく。
「な、なんでだろ…?あんな、気持ち悪かったのに……」
「な?効いたろ?」
クリームをホッペにつけた蒼空がニンマリ笑う。
「コレ、昨日キャンセルしてきた竹中のおっちゃんが教えてくれたんだぜ?
忙しくて目が回って具合が悪くなった時とか、腹が立って気が立ちすぎて気分が悪い時、コレがイチバンだってさ」
「へえ〜…」
ソフトクリームに、そんな効能があろうとは……。
(お店の売り上げが悪い時、事務所の扉に蹴り入れてあたる、ウチの店長殿の血圧にも効くかなぁ?)
・・・ん?今……
な〜んか、凄く聞き覚えがあるよ〜な、苗字が出てたよ〜な……?
「あのさ…その、竹中って人……もしかして、だけど…」
たしか、昨日蒼空はその人が “議会に” とかなんとか言って・・・。
「じ、自民党総裁、竹中 充…じゃないよねえ?ははははは・・・」
「そうだけど?」
・・・ し〜〜ん ・・・・・・・・・
遊具から流れる軽やかな音楽や、コースターから聞こえてくる歓声と悲鳴。
雑踏でごった返す音騒がしいまで、僕には全てが止まったように感じた。
