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仔犬のすてっぷ

第10章 JAZZと夢と、その裏に



「・・・ったく。ひでえ目にあったぜ」

まだ青い顔をしている蒼空は、吐き捨てるように呟いた。


「んなコトならカッコつけないで苦手だって言っておけば良かったぜ……」

 里美さんには悪いけど、固まって恐怖の表情を浮かべる蒼空の貴重な顔が見られた事は、僕にはラッキーだったのかもしれない。
なにしろ、彼の〈本音〉の部分は、飄々とした部分に隠れていてなかなか見れていない気がするからだ。




「あら?私は君の意外な面が見られて面白かったと思うけど……」

「コレは優希が行きたがったから行ったんだ。でなきゃ、誰が入るかあんなトコ」


頭をバリバリ描きながら、自己嫌悪に浸る蒼空の背中を、僕は軽くぽむっと叩いた。

「ありがとな、蒼空。苦手なのに付き合ってくれて☆」

「いや、当然だ・・・と、言いたいトコだが…次からは、勘弁な」

ああ、分かってるよ、蒼空。
僕のために痩せ我慢してまで付き合ってくれたんだもんね。


「蒼空さんて、意外とああいうのが苦手なのね〜?」

 こちらはと言えば、すっかり幽霊屋敷のダメージが抜けて、里美さんの腕に絡みつき、ゴロゴロと喉を鳴らす猫のような結さん。
里美さんに“よしよし♡”と頭を撫でられながら御満悦の様子だ。


「……ガキの頃に色々あって、それからはちょっとな…ああいう訳分からんモノが、どうにも苦手になってよ〜…」

・・・まあ、僕もどっちかって言えば苦手な方なんだけど…
ここまで毛嫌いするようになった出来事って・・・子供の頃、蒼空に何があったんだろうか?


「んなことより、そろそろ次に行こうぜ?ショッピングモールもあるんだろ?」

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