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仔犬のすてっぷ

第10章 JAZZと夢と、その裏に



結局…
このお店の中を使っての撮影会みたいな展開になり、店の周りにはギャラリーが押し寄せて……


「な、なんか恥ズいんだけど……」
「何言ってんだよ?コイツは、チャンスだぜ?」

 男モノの浴衣に袖を通した僕に、青が中心となる色合いの甚平を着た蒼空が背中合わせで並び、カメラを見ながら話しかけてくる。



「こんだけの物、買ったら幾らになると思う?コレ、みんなタダだぜ?タダ」
「僕はモデルじゃないからさあ…」


 向こうでは、白い生地に大きな向日葵が描かれた浴衣を着た結さんと、藍色の生地に色とりどりの蝶々が描かれた浴衣を着た里美さんが、仲良しペアみたいに色々なポーズを取らされているが、二人共満更でもなさそうだ。


「あんなん、買ったら浴衣だけで三万以上はするだろうぜ?」

「はい、次は…背の高い君、そこに胡座かいて、可愛い君、その後ろに立って」

なんか……撮影隊みたいのを呼び寄せて写真撮ってるんだけど…あれ、プロの写真家とかじゃなかろうか?(汗)


「はい、二人仲良く手を取り合って〜…はい、いいねぇ♡可愛いよ、二人共ぉ☆」

 里美さんと結さん……どんな写真が撮れたのか見てみたいな〜…



「大きい彼、小さい彼を肩車出来るかい?仲の良い兄弟みたいな感じにたのむよ〜」

「ほいきた!」
「わあ!あ、ちょっ!」

素早く僕の股の間に頭を通した蒼空が、ヒョイっと僕ごと立ち上がる。


「お?良いねぇその表情。上のキミ、可愛いよぉ♡」

「どお?いい絵は撮れてっか?」
「高い、高い、たかあぁいっ!」

 僕の視線は2メートル半ほどのところにある。
いきなりこの高さに視界が切り変わると、正直怖い。


「は、早く降ろしてぇ〜!」



「……次は、俺の個人的趣味で
バニーガール浴衣のアンタを担いでみたいねぇ?♡」

「ばっ…バカあぁ!」


僕は蒼空の頭を軽く小突いて喚いた。



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