
仔犬のすてっぷ
第10章 JAZZと夢と、その裏に
「そろそろメシ食って、広場に行くこと考えないと……」
只今時刻は夕方6時半過ぎたところ。
花火大会は8時スタートなので、そろそろ場所取りやらを考えないといけない。
「チェックインして、荷物を置いたらロビーに集合でいいかしら?」
里美さんの提案に賛成した僕等は、すぐにフロントへ向かった。
取れた部屋は3階奥のセミスイート。
料金は、平日料金で、知り合い割引(←コネって言わないところが(苦笑))を効かせても約5万…まずまず高い(汗)
……いや、セミスイートだから、お得なのかな?(原価、知らないから……)
・・・まあ、急に決まった事だし、給料日後だったから良いけど……
今月は、節約生活を余儀なくされそうだ。
・・・・・・・・いや。
問題はそこじゃない。
蒼空と、二人きりで、ホテルに、一泊…。
(ま、まあ…ベッドは2つって話しだし……離れていれば問題は……)
・・・問題、あります。
ベッド……2つのシングルベッドが2台、仲良く並ぶ。
しかし……
(ベッド…くっついてんじゃん(汗))
ここで…今夜は過ごす…のか……
一応、部屋は落ち着いたブラウン系の色合いで統一され、激しく情緒不安定にするようなアイテムは見当たらないが、相手はあの蒼空だから…
オオカミになった蒼空を止める手立ては、体にしこまれた八極拳だけだ。
(昼間、里美さんに言われた件、忘れたわけじゃないけど……)
本気で蒼空には拳を打ち込むような真似はしたくはない。
「おーい。優希、早く行こうぜ♪」
ゴキゲンでこちらに声をかけてくる蒼空の笑顔を見て、僕はこの事を考えるのを先延ばしにする事にした。
(蒼空だって…わかってくれるさ、きっと……)
「あ、ちょっと待ってよー!」
この部屋に一旦全部を置いて、僕は蒼空の後に続いて部屋を出た。
