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ぼんやりお姉さんと狼少年

第23章 秘湯での秘話



「大丈夫だと思うんだ。 ……なんで急に兄ちゃんがあんなになったのかは分かんねえけど、最後にオレが真弥って呼んだら、兄ちゃん、ちゃんと反応してたの覚えてんだ。 ここに帰ってからも元の兄ちゃんだったしな」

「うん、大丈夫だと思う」

「だよな! 早く傷治してまた真弥の飯食いに行くからな!」


最初は不安げだったその表情が澄んだ青空みたいに明るくなった。
そしたら周りまでつられてつい笑顔になってしまう、雪牙くんはまだそんな子供でもある。


「待ってる。 いっぱい作って、そしたら浩二とかも誘ってお弁当持ってドライブでも行こうか?」


オレ車ってまだ乗った事ないや、楽しみだ! 雪牙くんが浮かれた様子で言う。

そんな保証なんかない。
琥牙が元に戻ってまた一緒に暮らせるなんて確証は無い。
だけど雪牙くんが笑ってくれるんなら、私はそのために何をしても頑張ろう。

そうやって気持ちを新たに奮い立たせて、その室をあとにした。



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