ぼんやりお姉さんと狼少年
第36章 役立たずな言葉、饒舌な体*
まるでもう決定事項だとでもいうように、冷静に私に理解出来ない言葉を並べ続ける琥牙に思わず声を荒らげる。
「勝手に決めないでよ。 私を、私の気持ちは置いていかれるの!?」
……そのときに、リビングから発された懐かしい声が私たちの会話を遮った。
「真弥どの。 そうではありません」
「兄ちゃん、相変わらず不器用だな。 きちんと理由を話さないと真弥が混乱するだろ? オレん時もそう言ったハズだぜ」
ベランダの鍵が空いていたのだろう。
いつも通り室内にスタスタと入ってきた一方で、遠慮がちにその後ろからやってきた気配。
つられるように立ち上がり、大急ぎで私がベッドから降りた。
そう。
だって彼らも、私にとってはすでに『大事なもの』なのだ。
「は、伯…さ……雪牙くん…今までっ!?」
「真弥待っ」
琥牙の制止も無視してリビングに差し掛かり、相変わらず天使みたいな雪牙くんに抱きついた瞬間に大声を出された。
「…うわあッッ!?」
「真弥どの。 何か着ないと若者には目の毒です」
横を向いて言う伯斗さんに、なにかと思い自分の姿を見下ろして、薄い生地の合間にぽろっとこぼれてる胸やらなにやら。
「えっ。 きゃあやあああっ!!」
高速で壁に後退りする雪牙くんと、悲鳴とともに床に丸くなって伏せた私を眺めながら、深いため息と一緒にシーツを手にした琥牙もリビングに姿を現した。