テキストサイズ

ぼんやりお姉さんと狼少年

第37章 Plan - Do


そして伯斗さんが私をじっと見ながら先を続けた。


「今の里の状況もあるでしょうが、琥牙様は真弥どのとの今後を考えるにあたってこう言っておられました。 『真弥を自分の母親のようにはしたくない』と」

「…………」

「夫に早逝され、里を守っている朱璃様の苦労を、琥牙様は幼い頃から見てきたわけですから」


狼は身内をとても大事にすると聞いている。

朱璃様のためにも、彼は帰らなくてはならない。


「そうだったんですね……」


ああみえて琥牙も彼なりに、親思いなんだろう。

彼があんなことを言い出して、ともすれば……最近伯斗さんたちの訪問も無かったのは、わざと私から引き離していたのもあったのかな。 とそんなことも思う。


「頭では理解出来ますけど」


私だって最初は、なんで朱璃様は夫が亡くなって人の世界に戻らなかったんだろう、なんて考えたもの。


今は。
たとえば仮に『そう』なったとして、自分の子供を置いて……そこから出ることなんて考えられない。
琥牙が普通よりもずっと危険な立場に就こうとも。

そうならないためにも、私は彼の足手まといではいけないのだ。

私はなにをすれば?

彼の助けとなるために。


しばらく考え込んでいる私を伯斗さんは真面目に見詰めていたが、やがてふっと小さく息を吐き、脚を伸ばして伸びをした。


「しかし、どうしたものでしょう。 如何せん琥牙様はお優しすぎます。 いくらあの卓とかいう叔父が強かろうと、琥牙様には適うはずが無いのです」

……それを里の者にも知らしめなければいけないのですが、とてもあのような性分では。

そう言って、半ば諦めたように床に目を投げる。
琥牙を知り尽くしている伯斗さんにすれば、それはおそらく難問なのだろう。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ