ぼんやりお姉さんと狼少年
第37章 Plan - Do
「確かに兄ちゃんは優しいけどさ。 真弥のことになると別人だよな。 そういう時も、さっきのあんな感じだったらいいのにな?」
「……そう言われてみれば、そうですなあ」
目の前の一人と一匹がいっそ床に腹這いになりくつろぎ始める。
「伯斗さん。 私にも協力させて下さい」
私がそう言うと、床に肘をつきながらプラプラと遊ばせていた足先を止め、雪牙くんは青い目を見開いて顔を上げた。
「ダメだ。 こんなのは男の仕事だぜ。 真弥、前にもオレらに巻き込まれてイヤな目にあってんじゃねえか」
一方伯斗さんは耳をこちらに向けて、話を聞いてくれる仕草を見せてくれた。
「協力、というと?」
「えっと……私は二ノ宮くんと同じ会社だから。 それとなく彼を探るとか、他にも」
「駄目だよ」
その聞きなれた声…だが、独特のトーンに私たち三人はビクッと肩を震わせた。
「琥牙」
ご機嫌がよろしくないバージョンの。
暗いキッチンの入り口に立って私たちを見下ろしている。
そして間髪入れず、頭ごなしに言ってくる。
「そんなの許さない。 遊びじゃない」
もう、何なの?
うちの浩二じゃあるまいし。
単に妬かれる位ならいいけど、それにしても今晩の彼は私にあれこれ言い過ぎだと思う。
「琥牙にそこまで口出す権利なんか」
「ある。 真弥になにかあったら真っ先におれは真弥の元へ行ってしまう。 両方は持てないって言ったでしょ?」
「来なくっていい。 自分の身は自分で守るもの」
別に虚勢ではなく、普通にそう言った。
すると別に馬鹿にしてくるわけでもなく、普通に目を開いて驚かれる。
「それ、本気で言ってるの? 普通に生きてるだけでも危なっかしいのに」
うっ、それは事実なんだけど。