ぼんやりお姉さんと狼少年
第40章 里の特産月の石
腕のガーゼをめくってもう血が止まりなんともないのを確認すると、抑えていたテープを剥がしつつ浩二が訊いてきた。
「朱璃様は人間だし、少し違うかな。 前までは人狼の旦那さんがそうだったみたいで、今は琥牙だよ」
「なるほど、ねえ。 色々合点いったわ。 真弥がそういう立場にあんなら琥牙、あいつに任せとくのは得策か。 オレじゃ役不足過ぎる」
そんなヤツらとは付き合うな。 そう言われるかとも思っていたから、浩二の言葉は意外だった。
「にしても、だった……て? 今は旦那はいねぇのか」
「朱璃様のこと? うん。 かなり前に亡くなってる」
「フーン………」
二回りも違う年齢差はどうにもならないけど。
そもそも朱璃様は、亡くなった旦那さん一筋のはずだし。
そんなことを考えてると、自分の弟がなお一層不憫に思えてきた。
車が実家の敷地に差し掛かり、間もなく駐車場に辿り着いたようだ。
「あ、浩二。 アメでも」
再びそう言ってごそごそとバッグの中を探ると、浩二が心から煩わしそうな目をこちらに向けた。
「いらねぇって……お前は大阪のオバチャンか」