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ぼんやりお姉さんと狼少年

第40章 里の特産月の石


それにしても。

あの時私を助けてくれたときに目の前にあった、浩二の傷付いた背中を思い出した。

朱璃様ほどとは言わない。
けれどせめて、自分の身は守れるようになれたら。

いや、あそこで生きていくのならそうすべきだと思った。


「……私も里に『帰った』ら、戦い方を教えてくれませんか?」

「構わんぞ。 体を動かしたあとの風呂は格別。 また女同士、今度は酒でも飲みながら風呂で語るか」


そう言ってにこりと顔を綻ばせる朱璃様。


「是非!」


普段は凛としている女性だけに、それは余計に人懐っこくて可愛らしく見え、女同士でもきゅんとくるものがある。
浩二ってある意味、見る目あるんだわ。 そんなことを思った。




****

「あー、疲れたな今晩は。 真弥、今日は家に泊まってくんだろ? どうせ明日は土曜だし、もう電車も無いぜ」


コキコキと首を捻って鳴らす浩二の愚痴を聞きながら、私は行きと同じく帰りの車に揺られていた。
ここまで来ると実家はすぐ傍である。


「そうだね。 浩二もありがとう」


有難く申し出を受けるも心中は複雑だった。
何も知らない浩二を巻き込んでしまって申し訳なかった。

彼の服は破れて役に立たなくなったので、山中さんから借りたシャツの袖がパツンパツンで窮屈そうだった。
せめて今月のボーナスで彼にコートでも買ってあげよう、などと思う。


「朱璃が里やらのボスなのか?」



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