ぼんやりお姉さんと狼少年
第44章 おねだりは露天風呂で*
「…………あっん」
皮膚の端っこを食まれたら、自然とスイッチを入れたみたいに甘い声が出る。
「耳……弱いよね」
多分、琥牙の声のせいだ。
どちらかというと乾いた印象のそれが音量を落として掠れて、直接脳に囁いてくるような。
「ちっちゃい耳たぶ。 お金持ちになれないよ?」
ぱくりと食べられて、伸ばされた舌が入り組んだ耳の器官を探っている。
声とは逆に、それは湿りを帯びてぴちゃぴちゃ響く。
「あ…ん……っ…ぁ、ああ」
立ち登る湯気から時おり滴る水の音も、楽しげな宴の声も、消えてなくなる。
ツツツ、細く丸められた舌の先が溝のあいだを移動していた。
ずっと聴いていたい。 だけど粟立つ肌がムズムズして。
「かわいい。 マンションの時は全力で拒否してたもんね」
両手ですくわれた胸を、持ち上げるような触り方はどちらかとうとマッサージに近い。
「っ……て、あれ、は。 琥牙…が」
それを両脇から寄せて、そんなことをしてる内に中央に手が滑ってくる。
私の途切れた言葉の、その続きを受け止める。
「あれは、なんだろ。 いつも妬いてるのと似てるような、違うような……ぶっちゃけると、真弥を取られたみたいな?」
今は耳の裏を可愛がってる彼の口が拙い感情を吐露し始める。
両胸の中央に差し掛かった指先が、うすく色の変わった乳輪に触れていた。