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ぼんやりお姉さんと狼少年

第44章 おねだりは露天風呂で*



「よかった、無事で。 迷ってたんだ───────どこからが信用で、どこまでが独善的なのか。 おれの意思はどれが獣で、優先すべきなのは『どちら』なのか。 正しい……は、少し違うね。 真弥が真弥であるべきときに、おれは真弥に寄り添っていたくって………それはまるで普段と変わらない。 多分それが、いつもそうでありたいおれの理想なんだと……今はそう思う」


だから自分が迷ってるときは、忘れないようにしなくちゃ。 流されないように、呑まれないように。

そんなことを静かに話してくる。


「…………悩めるお年頃なのね」


「なにそれ。 からかわないでよ」


そう言って私の頭の上に顎を乗せてぐりぐりする。
私のそれはからかいというか、照れ隠しに近い。

彼が私を思いやってくれてるのが嬉しかった。
話したことを突き放されたように感じたこともあったけれど、それも、きちんと拾っていてくれていたのだと。

そんな風に丁寧に愛してくれる、琥牙をとても愛おしいと私は思う。


「真弥が結構、大人なのは知ってるんだよ」


そんな話をしてきて、凄いねー。などと軽口を叩くと、ため息混じりにうん。 とどこか浮かない声で言う。


「だからおれ、真弥に相応しい男にならなきゃ」


ホントいうと、そんなセリフはこっちが言いたい。


「相応しいからここに居るんじゃないの」


でも、私は言わない。

言葉にしたら、甘えてしまいそうな気がするから。
彼に相応しくあるために。
そんなの、私だって余裕なんかないもの。


触れていい?

そんなことを言うけれど、返事を待つ合い間も与えてくれないんなら、聞かなきゃいいのに────────……



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