ぼんやりお姉さんと狼少年
第44章 おねだりは露天風呂で*
強制的に味わされた絶頂に、くたりと浴槽のへりにもたれかかり、私は細い息をついていた。
一方琥牙は物足りなそうな顔で、極力私から目を逸らして自制してる……ように見える。
そういえば彼は特にそうだけど、男の人ってこのことに関しては案外デリケートなのよね。
「………ね。 みんな、なに……話してるの?」
里の内部……正しくは地下から。 どっと笑いが起こり、一際宴もたけなわな様子だ。
そんな彼らをそっちのけで、私あんなことしちゃったんだ。 今更のようにそんな身勝手な羞恥心に襲われてしまった。
それを誤魔化すようにした質問だった。
「………筋肉」
ボソッと琥牙が口にして、一瞬聞き間違えかと耳を凝らす。
「え?」
「やっぱり筋肉が一番大事だと浩二くんが言ってる」
「…………」
「然りと母さんが同意してる」
「…………」
「……雪牙と保くんがやっぱりそうだよなって」
「……伯斗さんは……」
「それは否めません」
「そ、そうなの」
「てな話を、延々ループしてる」
「…………」
聞くんじゃなかった。
筋肉だけであんなに盛り上がれるものなんだわ。
****
翌朝。
夜中過ぎまで部屋でその続きをされて、ダメージの残った体で私はみんなと朝食をとっていた。
朱璃様は昨晩の大体の話を聞いてたようで、関係ないのかは分からないけど、琥牙の席は里のリーダーが座るという以前は空席だった、一番の上座。
そこから私と浩二。 反対側は雪牙くんと朱璃様と続く。
談笑しながら食事が進む、人サイドはいつも通りだったのだけれど、伯斗さんの私と琥牙を見る目が異様に優しかったし、雪牙くんと二ノ宮くんはちょっとよそよそしかったのが気になった。
「フツーの話。 露天風呂であんな音量だとこっちに聞こえてるってことは、いくら騒がしくたって向こうにも聞こえてるってことだよ。 少なくとも人間以外にはね。 だから言ったのに」
その話題を口にした私に、呆れたみたいな顔で彼が言った。
それからそんな琥牙と私は二日酔い気味の浩二を伴い、そそくさと里を後にしたのであった。