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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第4章 ターキー国

国王の部屋の前。

チョットは大きく息を吸い、後ろを向いて去ろうとする。

「こらこらこら、待ちなさいよ」と光邦は、チョットの耳をつまむ。

「あ、逃がして下さい、お願いします」

「なに言ってるの、さっさと会ってさっさと出ればいいのよ」

「もし、別人のアーナル様だとバレたら……」

「私も出来るだけなりすましてあげるわよ。だから、思いきって行きましょう」

「……わかりました」

チョットは扉を蹴り開けた。

「いや、思いきりすぎるでしょ!」

扉は地球にある物のようにドアノブといったようなものはなく、取っ手がついて前後に押し引きして開けるものばかりだ。

『騒がしいな、どうした』

光邦には、まだ現地の言葉に聞こえた。

「国王様、チョットでございます。ただいま戻って参りました」

チョットの足は震えていた。

「え、あれが国王?」

部屋の中央の、カーテンで仕切られているところの奥に、なにやらシルエットらしきものが見える。

「隣にいるものは誰だ?」

ようやく光邦の耳にも、訳されて届いた。

チョットは生唾を飲みながら、

「は、国王様がお呼びになっていた、アーナル様を連れてまいりました」

光邦は、ただ無言でそのカーテンに浮かぶ影を見つめていた。

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