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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第5章 勇者光邦

光邦は引きずるように、チョットを運ぶ。

ダイトーロは横向きに、木を渡りながら向かってくる。地球のカマキリに比べれば顔はひし形で、カマは鋭いとげ状になっている。

「チョット、お願い動いてよ」

「動きたいんですが、体が固まって動かないんです」

「あなた、このままじゃ餌になるわよ」

「普段のダイトーロは夜行性です。しかし、こうやって明るいうちに出ることなんてありえません」

「よく、ジャングルで寝てる時に襲われなかったわね」

「この辺りに棲息しているからです」

「なっとく」

ダイトーロは、カラカラと音をたてて迫ってくる。

「ねぇ、チョット」

「なんでしょう」

「私、あれに勝てると思う?」

「え!?」

光邦は、太い木の陰にチョットを寝かせた。

金の剣を手に光邦はかまえる。

ダイトーロが目の前に迫ってきた。

首をクリクリと傾げながら、光邦にロックオン。

「うぉりゃーーっ!」

光邦は涙とよだれを垂らしながら、ダイトーロに向かっていく。

二本の大きなカマが、光邦に振り下ろされる。

「あだぁっ!」

カマが光邦を捕らえた。カマに光る無数のノコギリのような刃が、肉に食い込む。

「ちょ、離しなさいよ! 痛いじゃないのよ!」

腕も固められているが、動かせないことはない。光邦はダイトーロの前足にあるカマ付近を握った。

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