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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第1章 ちょっと、待って!

昔、都市伝説で、宇宙人が地球人になりすまし、人間の生態を観察するなどしていると、信じるか信じないかはあなた次第ですの人が語ってはいたが、それがまさか、自分達のグループにいたとは思わなかった。

「あいつがそうだったのかよ……よりによって、なんでゲイの方向にいったのよ。他にあったでしょ」

『とにかくアーナル様、もうすぐ星に到着いたします。過去のこと、少しでも思い出されたなら、おっしゃって下さい』

光邦は、わけがわからずに、涙が溢れてきた。同時に汗もにじみ出るが、自然と汗の色を確認している自分がいた。

大丈夫、赤くはない……。

チョットが言う過去の事なんて、自分は体験していないわけで、どれだけ捻っても出てくるはずがない。

唯一出るのは、高校時代、好きな男子に告白したのち、返事は放課後、体育館裏でと言われて、ドキドキしながら向かったら、その男子の仲間五人にボコボコにされたこと。ぜってぇ、忘れない。

ただ、いま無駄にわめいても無駄な抵抗だってことはわかってきた。今、ここでチョットを殺っちまっても、自分は帰る事が出来ない。ここは、記憶の無いアーナル様として、振る舞うしかない。

記憶なんて、あるわけがないのに、記憶が無いフリをするのは難しいが、やれることはやってみよう。

(記憶がない、記憶がない……)

呆けた表情で、よだれをたらしてみた。

『どうしましたか、アーナル様!』

「どうしろと言うのだお前!」

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