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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第7章 ガシ国

運がないことは、この星にさらわれた時点で自覚していた光邦だが、ただ、ハッキリわかったことは、ここで浴びたそれなりの投石では死なないということだった。

「ここの川は流れが急で渡れない。一度上流を目指す」とオイドが流れの反対側を示した。

「え、この川渡れないの? 橋とかは?」

「橋とはなんだ?」

「なんで文明にこんな極端な差が生じるのかしら? さっき、トリセンナシなんてニューヨーク顔負けの都市だったわよ」

オイドの案内で、深い森の中を進む。正直、オイドがいなければチョットと光邦では、間違いなく遭難していたことだろう。

昼間でも、木に遮られ、ほとんど太陽が入ってこない。さらに地中の栄養分だけで育つ草花は自然のものとは思えない気味の悪い色を施していた。

「ねぇ、オイドさん、このジャングルあとどれだけ歩くのよ。川の上流はまだなの?」

「まだまだだ。川の流れが落ち着いた辺りまでいかなければならん」

「ガシ国って、そんな困難な所にあるの!?」

光邦もチョットも疲労困憊の中、年のわりに健脚なオイドは、息切れもせずにスイスイと進む。

「私が思うに、あの人こそ本当の勇者だと思うわ」

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