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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第8章 アーナル

光邦は顔を上げる。

「いや、あんな物より、凄い宇宙船をさきに作ってるでしょ! なんの説得力もないわ!」

惑星最大の天然ボケに、思わず悲しみが吹っ飛んでしまった。

アーナルは村全体を見渡す。

「これでガシ国が失われたって、なんともやり切れないね。幼い頃は、ガシ国に遊びに来てたりもしたけどさ、戦争始まって、犬猿の中となり、戦うために訪れたのに、まったく争うことなく終わっちまったもんな」

それを聞いた光邦は、心の中で、

(それは、私が原因でもある。てか、ここでも犬猿の中って言葉があるのね)

チョットが息を切らして向かってくる。

「ガシ国王の姿がどこにもみあたりません。トリセンナシ同様、行方不明です」

「なに?」とアーナルは目つきを変えた。

国王は勇者が亡くなれば自害し、国の名を捨てなければならない。

「窓も開いた形跡はなく、短時間で逃げるような抜け穴も見当たらないんです。消えた……としか、言いようがありません」

チョットの話を聞いたアーナルは、剣を抜き、村人にその先を突きつけた。

「ガシ国王の居場所はどこだ。隠している者がいれば、ターキー国勇者であるこのアーナルが容赦はしないぞ」

剣を向けられた高齢男性は後退りし、「待ってくれ……どういうことだ? あんた、なにを言ってるんだ?」と体を震わせた。

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