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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第8章 アーナル

「ふむ……」とアーナルはもう一度村人に顔を向けると、静かに剣を鞘におさめた。


勇者が死に、国王が消えた。

その知らせは、すぐにガシ全体に広まった。

ガックリと肩を落とす者、泣きじゃくる者、しょうがないと諦め、ガシ国の表記を塗りつぶす者、表情は様々だ。

光邦、チョット、アーナルに向けられる目は、歓迎されるものではなかった。

旅の疲れか、今日は休ませてと光邦が願う。

「今日はあの宿で一泊いたしましょう」とチョットは木造の建物を指差す。

中に入ると、宿屋の女主人が玄関まで出迎える。

「なんだい、国を潰したあんたらが客かい。あんたらを泊めたって変な噂がたっちまったら、うちの宿屋は商売あがったりだよ。そうなったらどう責任とるんだい?」

腰まで伸びた紫色の髪をかきあげ、見た目四十代の厚化粧の女は、黒いワンピースのようなものを身につけて、顧客名簿らしきものをチラチラと見せ付けた。

「私たちなにもしてないわよ。あのオイドって人、勝手に死んじゃったのよ。てか、私たち客よ。あなた、ちゃんと接客しなさいよ、そんな態度でよく宿屋やってるわね」

光邦が女主人の言動を注意すると、

「……わかりました。三名様、お泊まりでございますね。はい、お帰りなさぁ~い、ご主人サマァ~」と猫撫で声で応えた。

「あなたがそれでいいなら、それでいいわよ」

「あれでいいのか?」とアーナルはやや困惑気味だった。

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