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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第3章 いざ王国へ……

「なにが?」

『人の声みたいなものです』

「ひと!?」

光邦も耳をすませる。

なにも聞こえない。それどころか、唾を飲み込むと、耳の中でバリっと音がする。

「耳垢溜まってるわ……」と右耳を爪を長く伸ばした小指でグリグリしていると、

『アーナル様、向こうです。行きましょう』と腕を引っ張ろうとするが、誤って、光邦の肘を下から押し上げた。

耳の入り口に、スパっときた痛みが走る。

「んがあぁぁぁぁーーぁぁぁあああわぁーーっ!!」

耳から赤い布引きの滝が流れる。

『アーナル様、もう槍は飛んでません』

「お前の罠じゃ! このナイトスカイはげっ!」

『ナイト……スカイは……え?』

「もういい、後でお前、鼻の穴に小指突っ込んで下からつきあげてやるわ」

『ありがたきお言葉』

「お前はどうやったら懲りるの?」

とりあえず、声がする方に向かうことにした。

近付くにつれ、光邦の痛い耳にもその声をとらえることが出来た。

「え? 助けてって言ってる」

『そう言ってるんですか?』

「え?」

いま、光邦の疼く耳には、たしかに「助けて」と聞こえている。

だが、聞こえているはずのチョットが、聞き取れないといった表情。

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